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インターネット的構造は本当に人々自由かつ豊にしているのか

 

富国と強兵

富国と強兵

 

 

中野さんの「富国と強兵」を読みました。

近代から戦後にかけての政治経済分析として、非常に面白かったですし、何よりなぜ、いまこのような状態になっているのかという分析としても、最も一貫性を持った説明だと思いました。

 

さて、この本の要点をいうなれば、

<国家的観点>

1、国家的枠組みは国際関係によって規定される。特に戦争。例としては、デーン人と戦うことで、イギリスが出来上がり、フン族やイギリスと戦うことで、フランスができあがっていった。

2、国家的枠組みがある場合は、戦争が民衆により力を与える。イギリスでは、戦争の動員のために、福祉政策などが実行された。逆に国家的枠組みが当時薄かったイタリアは、戦争動員が強制的側面を帯びた。

3、国家が成立することで、日々の調整を可能とする「インフラストラクチャー

権力」が成立する。(法システムと懲罰実行のシステムなど)

<経済的観点>

1、生産力を向上させるのは、自由主義ではなく、政府の巨大投資。

2、これが、マクロ経済政策の財政政策。

3、戦争は財政政策の良い例。大量生産方式は、軍服や砲弾の大量需要が一気に広めた。

ということで、戦争に規定された、国家的動員が生産力を向上させ、国民にバーターとしての権利を付与してきたということである。

 

また、戦争の結果見えてきたこの種の政策は、ケインジアン的政策の基礎となるとともに、資本主義では、生産力の高まりとともに、供給過剰と需要不足に陥るが(より少ない人数で生産できれば、賃金をもらえる人が減るため)、そのため、海外市場を求めるという、経済帝国主義になる傾向があったが、ケインジアン的政策によって、調整を行えば、これを防止できるというのである。

一方、経済自由主義は、供給力を向上させ、デフレを引き起こすが、これは、金融階級に有利になる。なんとなれば、貨幣価値の向上はすでにお金を持っている側を強くするからである。そして、労働者階級が弱くなっていき、生産力が落ちていく。(供給力は生産力ではないのです。)現に、イギリスがアメリカやドイツに負けていったのは、この構造であるという。

 

現在、先進国内では、非常に似たような状況になっている。

アメリカは上位1%が資産の50%以上を持つような状況になっており、大半は金融家である。アメリカは経済自由主義に舵を切ってから、生産力が落ちていき、製造業の多くが没落していった。これは、関税を引き下げることによって、海外の安い労働力に負けたことが、大きな要因の一つでもある。さらに、会社の利益は従業員に賃金として還元されず、株主に還元されるとともに、労働力をより安価にするために、非正規雇用が多くひろまり、労働者のスキルが向上しなくなった。

日本も小泉政権以来、この構造を取り入れており、貧富の格差が広がっている。

 

本書の分析は、ここにとどまるものではなく、より深く広い分析がなされているので、一読の価値ありです。

 

さて、この本の発想から、インターネット的なものが本当に人々を開放しているのかということを考えます。

 

 インターネットによって、個人の発信力が強化されるとともに、どのような情報にもアクセスできるようになりました。これは、消費者の評価を伝えることが可能となり、消費者側に権力が移行したと評する人もいます。ロングテールなどの現象に代表されるように、多くの人が、自分の嗜好にあったものを簡単に購入できるようになりました。

 youtubeやブログなどの媒体は、個人が情報発信することを可能にすることを可能にしました。また、アラブの春といった民主カ運動もfacebookがそのつながりを生んだといわれています。

 近年は、ソフトウェアが必ずしも商用に寄らなくなっており、オープンソースによる開発なども注目されており、これを支えているのもインターネットです。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略では、インターネットがフリーミアムという新しいビジネスモデルを打ち立てたといわれ、「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」では、ものがインターネット的に配布される世界が3Dプリンターを通して現れ始めると言われています。

 この構図は、本当に人々をより自由にし、豊かにしているのでしょうか。

 

これについて、以下の分析を行いつつ、統合していきたいとおもいます。

1、システム工学から見る、生産力の向上

2、組織論とミクロ経済から見る、評価・信頼・分業・賃金・動員の影響

3、マクロ経済から見る、経済システムの影響

4、これらの統合としてのイノベーション論と政治

5、国際関係を踏まえた上記枠組みの修正