私ごと

自分の観点を言語化しておくブログ

シャープに対する様々な言説

シャープが鴻海の案を受け入れる方向でうごいているようです。

News Picksなどでは、これは「英断」と言われています

newspicks.com

 

一方で、保守論壇では「技術流出」等でかなり批判的にとらえられています。

 

www.youtube.com

 

こういった違いはどこに起因するものでしょうか。

ます、newspickでの意見は、市場というものが独立して存在しており、そのうえで、合理的選択をするべきであるという意識に基づいているものと思われます。

経営者意識あるいは市場意識であれば、

1、早い動きができるほうがよい。

2、高く買ってくれるほうに売るほうが良い。

となります。このような意見は、グローバルリズムと親和性が高いです。なぜなら、市場が「普遍的」に存在するからです。

 

一方、保守論壇の意見は、国家が定めるルールや教育を含めた制度によって、市場が支えられているという意識に基づいているものと思われます。

この意識からくる帰結は、

1、技術は人材教育から研究開発など、政治体制も含めた社会があってこそはぐくまれる。

2、技術的な独占権を他国の企業にとられることは、セキュリティー上危ない。

となります。さらに個別事情として、

1、鴻海は中国資本がかなり入っており、中国共産党の意向に逆らえなさそう。

2、中国自体が自国で技術革新を行うことができていない。

といった問題があります。このあたりは、日本もアメリカから「科学的知識に貢献もしていないのに、技術の真似だけした」と1980年代辺りでたたかれていますが、中国はもっとひどいということです。(アメリカもそれを口実にいろいろな圧力をかけたため、上記が単に口実ということもありえますが)こういう国家がパワーを持ってしまうと、世界の発展を毀損してしまいますね。

 

やはり、政治体制まで考えると、まだまだ「国民国家」という枠組みを超えて、「普遍的な市場」を想定するのは難しいと思います。このあたり、貨幣価値とは何かまで議論が行くので、次の政治体制に移行するというのは謂わんをやです。後者を支持しますが、中国でなく他の先進国であれば、前者の判断をし、公正なゲームをする方が、よいのかもしれません。

結局、土木事業や研究開発が、国によってのみ保証されるというメカニズムをどうできるかということになりそうですね。

 

www.mag2.com

 

2016/2/9追記

シャープが持っている、知的財産が国防上どれだけ大事かということもポイントですね。シャープの知的財産が国防に関連していそうではないので、そういう点も含めると、前者のほうがよいのかもしれません。結局企業が異なっていると、連携はできませんし。

 

重工長大?

重工長大産業はどうしたら変わるのでしょうか。

 

航空機なんかは、やっと電動化が始まったところであり、いまだに”機械”なのだ。だから、多分生産効率が悪いのだろう。

 

機械はデジタルデータにできないので、制御効率が悪い。

 

また、航空機は大きいし、安全性を厳しく求められるから、そこのコストが激しい。

 

でも一方で、いまapple半導体設計してたりで、結構垂直統合らしい。

blogos.com

でも、この垂直統合はバリューチェーンを社内にもって、差別化を試みるもので、以前のコスト負担のための垂直統合とは少し違うのだろう。

 

nge.jp

 

上の記事とかに思うことは、アスファルトから変わると生産工程が一気に変わって、コストが急激に落ちるだろうなということ。レールみたいに道路を修復するかもね。

 

つらつら書いたけどとりあえずここまで。

 

 

外来語の無謬性

言語は、意味が含意されており、歴史性を持ちます。

www.youtube.com

 

例によって、西部ゼミナールの問題提起から出発しようと思います。

この講座ではdemocracyを民主主義と訳したため、普通のひとによくわからないようになっているという問題提起があります。西部いわく「demoは民衆であり、cracyが政治である」ため、「democracyは民衆政治」であり、民衆が賢ければ、よい政治になり、民衆が愚かであれば、悪い政治になるとのことです。

さて、日本にとっては、外来語はその概念にとって、歴史が浅いため、意味がはっきりとせず、実質的になにを指しているのかわからなくなります。こうなると、より「空気」で動く人々が出現しやすくなると思われます。

一方で、外来語が無謬であり、実質的に何を意味するかよくわからないからこそ、相手の感情を重視するコミュニケーションでは使いやすいのかもしれません。

しかし、これは歴史性の伝達に障害をもたらすとともに、同時に思考の時間軸を浅くしてしまう恐れがあります。

 

 

 

 

 

評判システムと私有財産制

私たちは、私有財産制社会の基に暮らしています。

これは、市場経済の基本と言われています。(市場経済 - Wikipedia

ここでは、私有財産と評判システムについて検討します。

個人的にわかりやすいので、研究者を例にします(このブログの趣旨とも合うし。)

研究者は日々いろいろなデータを生産しています。しかし、研究者はそれを成果にするまで共有しません。また、成果として論文を出しても、他人が真似できないように肝心なところは隠します。これは、企業でも同じです。生産設備を他の会社の人に見せることはしません。これは、私有財産制が許されるからこそ許されます。また、私有財産制によって、ある主体の生産の”効率性”が図られます。研究者であれば、論文数や論文媒体、会社であれば利益がその指標になります。この”効率性”が高い方が評判になります。

評判のある主体には、より多くの資源が渡されます。それは、金銭、社会的地位=権力であります。このように「権力者」が形成されます。

(評判システムの形成自体は、マスコミュニケーション論に譲ります。)

この効率性にはいくつかのものが混在しています。未知に対する将来予測精度、現在知識の活用、人的リソースの運用などなどです。そのため、多くの判断が「権力者」にゆだねられます。専門家も一種の権力者です。そして、権力者の判断の下、他の人々が動くことになります。

つまり、会社でも社会でも私たちは、私有財産制が立脚されているからこそ、”評判競争”をしているわけです。この評判が、原理的には金銭にも結び付きます。

いっぽうで、知識や事実は一人によって形成されるわけではなく、また有益な知識や事実は広く共有したほうが効率的です。

(この共有は会社での情報伝達が重要という意味ではないです。会社での情報共有は、同一方向に進むために必要であり、これは数の力を利用する点で重要です。ここでは、知識が共有されたとしても、それが多様に解釈され、多様に発展しうる点で重要ということです。これは、共通基盤の誕生とその消滅につながります。共通基盤は模倣による知識伝播によって形成され、その基盤に限界が来ると自然と消滅します。)

また、「集合知」の活用を考えると情報にたいしてどこまで私有財産制として認定するのかというのは、社会的問題のみならず、私たちの現実認識の構成や経済ともつながってきます。いっぽうで、”商品”として提供するものとして共有化を図っているという側面もあります。

さらに、評判競争のための金銭と日々を生きていくための金銭は実は別です。同一化したからこそ、やり取りが効率的になった反面、社会的な死が評判によってもたらされてしまいます。このあたりが、宮台真司が言説する”グローバル化による社会の空洞化”につながっていると思われます。

bitcoinについて

個人的なまとめとしてビットコインについて記載する。

bitcoin.peryaudo.org

等にも詳しくのっており、また、

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

 

 

にも記載があるため、詳細を知りたい方はそちらをご参照されたし。

 

bitcoinの前に、通貨として機能する媒体の必要要件を記載する。

<必要要件>

  1. 数量化可能
  2. 受け渡し=移動(通信)可能
  3. 改ざん、成りすまし、結果の否認が不可能
  4. 2重譲渡防止。*1

    現在の紙の通貨はこれらを満たしている。現物の紙幣は数量化可能であるし、受け渡し可能である。また、その場で決済するため、成りすましや結果の否認も不可能。そして、1枚の紙幣を2人に渡すことはできないので、2重譲渡も不可能である。(改ざんは紙幣の偽造がありうる。)

    小切手は銀行が監視することで、これらを防止している。

    クレジットカードや電子マネー等も銀行がこれらを監視することで、上記を満たしている。

    さて、以上からわかることは、貨幣も小切手もクレジットカードも「管理主体」が存在していることである。そして、それは「管理主体」への信用に支えられている。

     

    bitcoin

    bitcoinがこれらと一線を画すのは、「管理主体」が不在ということである。

    それではどのように必要条件を満たすのか。

    bitcoinは以下の機能を持っている。

    bitcoinの機能>

    1、電子署名を用いてビットコインを送る。

    2、取引をP2Pネットワークで維持するブロックチェーンに記録する。

    3、ブロックチェーン改ざん防止のため、プルーフ・オブ・ワークの計算を課す。

    電子媒体は、必要条件1,2を満たす。電子署名は必要条件3のうち、改ざんの一部以外を満たす。残りは、改ざんと必要条件4である。

    改ざんの一部というのは、「莫大な計算能力をもつ、改ざん者」がいた場合に、改ざんが可能となるからである。これについては、後述するが、bitcoinの機能3によって対応している。

    必要条件4については、bitcoinの機能2によって対応している。

    「ブロックチェーン」(Block Chain; ブロック鎖)は、それぞれの「ブロック」(Block)を持つ。それぞれのブロックは、多数のトランザクションと、あとで説明する「ナンス」(Nonce)と呼ばれる特別な値、そして直前のブロックのハッシュを持っている。「ブロック」に含まれた取引のみを「正しい取引」と認めることにする。そして、ネットワーク全体で「唯一のブロックの鎖」を持つようにする。これによって、一貫した取引履歴を全体が共有できる、というのがブロックチェーンのコンセプトである。

    これが、2重譲渡問題をクリアしている理由は、ある時点において、あるビットコインの所有者は一人しか存在せず、この記録がだれにもみられる形で存在し、書き換えが出来ないようになっているからである。

    図: ブロックの定義

    図: ブロックの定義

    Bitcoinの仕組み - ビットコインの仕組み:Bitcoinを技術的に徹底解説!より。一部改変

    さて、ブロック自体の作成は以下のように行われる。

    1. 過去約10分の全世界でのビットコイン取引と前ブロックのハッシュから生成されるハッシュ値を算出
    2. そのハッシュ値を算出するナンスの値を力技で算出する(原理的に力技しかないため

     この力技がbitcoinの機能3のプルーフ・オブ・ワークの部分にあたる。これによって改ざんを防いでいる。方式は以下のとおりである。まず、ハッシュ関数自体は一方向関数と言われており引数から結果を求めるのは簡単だが、結果から引数を求めることは難しいという性質を持った関数である。そのため、ナンス値からハッシュ値を求めるのは小さい計算コストで可能であるが、ナンス値からハッシュ値を求めるのは多くの計算リソースが必要となる。ブロックはハッシュ値、ナンス値、取引が含まれている必要があるため、このナンス値を求めるのに、計算コストがかかる。 一方で、ナンス値のチェックについては、簡単に行うことが可能であるので、正しい取引がブロックとして形成されるのを承認するのは比較的容易になる。

     また、ある時点の取引を改ざんしようとすると、その後のブロックすべてのナンス値について計算する必要がある。P2Pネットワークで常にブロックは更新され続けており、ネットワークよりも早く計算を行うことも困難である。これによって改ざんが防がれる。(中本論文の10章にその可能性について検討がなされている。)

     さらに、bitcoinには、改ざん防止のインセンティブとして、ブロックのナンス値を最も早く発見した人に、bitcoinが付与される。これによって、計算量を多く持つ主体は、改ざんよりもブロックの生成をした方が有利になる。またそれによって、bitcoinの取引コスト(主に電気代)が賄われる。

    残る問題

    一方で、発見者が複数でた場合などは、ブロックが分岐してしまうという問題が残る。分岐したブロックを両方しよう可能であれば、2重使用となる。これを防ぐために、次に伸びたブロックをしようするという方式がとられており、これによって、各人は一つのブロックチェーンを持つことになる。

     

    以上。

     

     

     

     

     

     

     

     

    *1:二重譲渡(にじゅうじょうと)とは、ある権利を他者(第一譲受人)に譲渡した譲渡人が同一物を第三者(第二譲受人)へも譲渡する関係をいう。この場合に、2人の譲受人の間でどちらが優先するかについての議論がなされる。なお、制限物権の二重設定や所有権譲渡と制限物権設定の競合の場合にも同様の議論がある(wikipediaより)

規模の経済、権力、工学

丹羽先生の技術経営論P176に、以下の一節があります。

「工学分野の計画の特徴は、目的が明確であることにある。(中略)じつは、それ以上に、目的の設定が困難ということにある。人間のそれぞれの価値観によって目指すべき目的が異なることが多いからである。」

 

技術経営論

技術経営論

 

 

目的が明確である場合、最適解を得ることが可能です。遺伝的アルゴリズムや勾配法など、最適化アルゴリズムは多々ありますが、指標化可能であれば最適化可能です。逆に、指標化することこそ、「エンジニアリングセンス」ともいえます。

 

最適デザインの概念

最適デザインの概念

 

 

この時、最適解を得るためには、情報を出来るだけ多く収集し、最適化指標を決定し、それに向けて最適化することになります。

これこそ、計画です。目的を明確にするためには、少人数の情報処理能力の高い精鋭が計画を立て、それによって、セットされた目的から手段を導出し、その手段が新しい目的となり、またそのための手段を導出し・・・となっていきます。

小幡先生の経済原論にもそのような記述があります。

 

経済原論―基礎と演習

経済原論―基礎と演習

 

 

さて、これがピラミッド型組織であり、上下関係であり、下請け、孫請けと生産関係が分割されていくことの原型でもあります。

このようなフレームで世界を見た場合、以下の2点がキーポイントになります。

1、より正確な計画を立てること。

2、より実行可能なために、出来るだけ多くの人を動員すること。

よって、ピラミッド型の組織が出来上がってきます。そして、それは規模が大きいほど有利になります。1,2の性質のほかに、インフラ整備の固定費負担とインフラ利用の共同性によって、出てきます。

これが、規模の経済です。

ようするに、エンジニアリング的観点から見れば、ピラミッド構造が所与であり、規模の経済によって上下関係が安定的に存在することになるのです。

(もう少し論理的に詰めたいところ。)

そのうち、ソフトシステムの経済についても書きます。

箸と価値

今日、買い物に行った時に、箸が羅列してあるのを見て、思い出したことがありました。

昔、金沢へ行ったとき、輪島塗の箸つくり体験をし、その時に職人さんが「中国製のものが増えてきているが、こういう長持ちしていいものを使った方がいい」と言っていました。

私は、その箸をいまでも使っています。一本では心もとないので、100円ショップで買った箸もあります。それでも主力はその輪島塗の箸です。

その理由は、清潔感とそれが長持ちする点です。

ここで、箸に期待するものが以下であることがわかります。

1、箸としてつかえること。

2、清潔感があるように見えること。

3、よいデザインであること。

4、それらが長持ちすること。

さて、輪島塗の箸は大体500円ぐらいだったと思います。これを10年使ったとします。

一方、100円ショップの端は1年程度でカビが生えて使えなくなったとします。

すると、10年単位では、輪島塗の箸の方が安くなります。しかも、”高品質”のものがつかえます。

この時、”長く使えるいいもの”が生き残る環境ができます。これは、消費者がこれを理解していることと、”良いデザイン”が頻繁なモデルチェンジに合わないことが条件になります。

ここで、モデルチェンジが頻発するものを考えます。例えばパソコンです。パソコンは、”長く使えるいいもの”がありません。すぐに性能が向上するからです。それもあって”モデルチェンジ”が頻発します。

他の例では、”ファッション”があります。これに関しては、私の知識不足で何も書けませんが、”流行りものの服”は長く使えません。勿論、服は流行りものだけではありませんので、すべての服がこれに該当するわけではないです。

ここまで、考察したことは、消費に対して、以下3点の区分を提示します。

1、長く使え、結果的に安くなるような消費

2、短くしか使えなく、結果的に高くなるような消費

3、短く使った方がよい消費

また、多くの人には関係ないですが、高い消費もあります。

3はテクノロジー商品に見られる傾向です。

1,2は”技術開発の文脈”でいうところのコモディティー商品に見られる傾向です。

というわけで結論ですが、

コモディティー商品は高品質長持ち型と低品質短命型に大きく分類できます。勿論高品質短命もそれを所望するひとがいればありえますが、数は少ないでしょう。また、高品質長持ち型は伝統品になる傾向があります。もちろん伝統品には”社会的評価=ブランド”という価値が付随することでより強力になります。

・テクノロジー進歩の影響を受ける商品は”モデルチェンジ商品”です。高品質短命型になります。また、消費モデルがファッションと類似するため、性能以外の面では、”ファッション”と同様の傾向がみられます。iphoneスマホはそのような消費でしょう。車もそのような傾向が認められます。しかし、性能型ユーザーはファッションを見ない傾向があり、ファッション型ユーザーは性能を見ない傾向があります。(統合型は両方見ます。)そのため、性能向上、外見のモデルチェンジは片方のユーザー群にしか響かない傾向でます。