マインドと社会

マインドと社会のインタラクションについて、科学技術や経済の変化を統合させながら考察します。

組織論とミクロ経済から見る、評価・信頼・分業・賃金・動員の影響

前記事で生産力の向上について述べました。(生産性ではないことに注意してください。貨幣的評価が入るので、単純に効率的に作る能力としての生産力としました。)

しかし、主に1組織または1系列における、人の動きを考慮しない生産力という観点でした。情報処理の面で、人の制約は考慮しましたが、欲求やインセンティブ、価値の感じやすさや交渉過程など、ある種の「人らしさ」の面がありませんでした。そのため、人の動きを含めた考察が抜けていました。本記事では、人の動きを考慮するうえで、組織およびミクロ経済に着目して述べていきたいとおもいます。以下の前職で提出したレポートが基本発想となっているので、合わせて参照していただけるとさいわいです。 

 

 

 先の記事で上げたのは以下の関係性でした。

P = f(n,t) constrain Stability, Safety

P: 生産する対象、n;人数、t:時間

and Production power is indicated by n and t. The smaller n,t are  the better production power is. また、これは金銭的なやりとりが入った段階で、単純に生産性において、分母が小さいことと同じです。

生産する対象の効率性という面では、経営学では、規模の経済と範囲の経済が知られています。

規模の経済とは、生産量の増大に伴い、製品の単価を下げて生産を行えるようになることを言います。範囲の経済とは、事業の多角化によって、製品の単価を下げて生産を行えるようになることをいいます。前者は、規格化を行うことで、機械による自動化が可能になることで発生します。後者も同様ですが、多種類の製品の共通部分を取り出すことで、可能となります。なお、範囲の経済においては、知識の共有化もその現象成立の要因と言われています。

 規模の経済や範囲の経済はともに組織を大きくする、外因となります。しかしながら、組織が大きいことは、生産力を下げる内因をはらんでいます。

  これには3つほど内因があると思われます。

1、人間の情報処理限界から、階層性が生まれるが、上部でルールが制定され、下部の柔軟性を喪失するため

1−1、下部の柔軟性が喪失されることによって、人が指示を受けてから動くようになるため

1−2、構造を変更する時に、上部を変える必要が出てくるが、これを上部に伝達し、実行することが困難になるため

2、人が、他人と同じように扱われないことを妬むため、ルールを可能な限りの一律に処理する必要があるため

3、規模が大きいと、動員や影響を受ける人数が増え、そのため一つの行動のリスクが高まるため

(1−1、1−2は1に付随して起きること)

 

これに、金銭的なやりとりを入れていきます。

高度に分業化された今日の社会では、生産したものを自分たちで消費することはあまりありません。むしろ、ほかの誰かと交換するのが常です。(専門分業の効率化によって、このような体制になります)そのため、生産した対象が交換の対象となるかが重要です。(特に貨幣を媒体して交換されるものになるかどうか)

 この交換自体は貨幣の量という基準で行われます。そのため、「生産したものはいくらで売れそうか」ということを考慮にいれて生産を行います。この段階で、「価値」という側面が入ります。貨幣による交換が確立すると、 n*t = w(賃金)として算出可能になります。(往々にして、希少な人材ほど単価が高くなります)

 ここまで、将来予測(期待値)を考察に加えます。これは、組織にかぎらず、個人についても同様です。

 将来の予測値が確度高くわかれば、それを基に最適な規模の生産を行うことが可能です。しかし、予測値はよくわかりません。しかし、成果がでれば評価され、予算が多ければ成果がでる可能性がたかくなります。そのため、一度組織で分業したあとは、予算を配分するにあたり、如何に自分の事業が伸びそうかということのアピール合戦になります。このアピール合戦が組織の中の政治です。しかし、一方で勝ち取ったものには責任がつきまといます。それは、責任という概念がそもそも不確実な将来に対して、損失補てんを行うということに該当するからです。(その最大の罰は死ぬことであると人々が思っているので、最高峰が死刑になります)

  評価という軸が出てきたので、評価について記載します。評価とは、AさんがBさんのことを、どのように感じているかが根本です。生産活動における評価は、主に仕事ということになりやすいです。評価は、一般化しない方が多様性を担保できます。組織は、この一般化されない(=市場でそれ単体では金銭価値を生まない)活動を評価することが可能となります。研究開発の実用化を例にして考えます。

 研究者はどのような問題で、どのように解決できるかを最もよく知っています。しかし、製品として安定して供給できるとは限りません。そこで、エンジニアが製品として安定させるプロセスの開発を行い、安定したある製品にします。しかしそれでは、使い方(ビジネスプロセスの中でどこに組み込むか)が分かりませんし、それでは存在が認知されません。そこで、営業が売り込んで、どこであれば使えるかということをお客様とお話します。

 これは、エンジニアと営業は現在の供給という面で評価されやすいですが、研究者はそうではありません。しかし、将来的には研究者も必要となります。研究者を養っていくためには、市場とは別の研究者を評価する組織が必要ということになります。

 評価もまた、私たちの3つの限界によって、束縛されます。評価においては、特に視野の限界に束縛されます。少数の人が評価するほど、評価の軸は減っていきます。また、少数の人が評価するとはつまり多数の人が少数の人に評価されることを指します。これは、多数の人は評価する側に回れず、また評価される側もその指標が視野となるため、若干の差異はありながらも、同じような評価指標を持ちがちになります。

 最後に組織政治ということで、人脈=ネットワークについて考えます。人ほど、人にとってのデータベースになるものはありません。言語的な伝達のうまさ、認識している事実など、人が一番のデータベースになります。そのため、人脈はデータべース的側面を持っています。特に、抽象的な支持やコミュニケーション、社会的な事象については、いまだ人間以上の存在はいません。このネットワークは情報の伝達経路と強度を決めます。インターネットの発達で、言語的かつ一般的な情報は多くはいるようになりましたが、ローカルで体系的な情報はやはり人に依存しているのが現状です。一組織であれば、その傾向はより顕著になるでしょう。

 以上を仮説形式としてまとめます。

1、規模の経済と範囲の経済により大規模組織になる要因が外的にある

2、組織は市場では評価し得ない人材を評価し抱えることができる=複雑なバリューチェーンは組織化することで、多くの人にとっての価値となる

3、人はだれかを動員する時に、責任を伴う。責任は時に賠償を伴う。

4、評価は人の視野の限界によって、その軸に限界を持つ

5、ネットワークは情報収集力であるとともに、動員の力にもつながる。

さて、この仮説からどのような動態をシミュレーションできるでしょうか。(マルチエージェントでできればいいのですが、力量がないので、脳内シミュレーションでいくつかの仮説的な動態を提示します)以下では、個人が可能な限りネットワークを張りつつ、多様な評価を可能とすることで、「イノベーション」がより個人が自由にふるまうことができるようになるという主張をします。(イノベーションが括弧つきなのは、それが金銭価値になるとは限らないという意味です。また、この中で、イノベーションとは、評価軸の変更とバリュープロセスの変更と考えています。)

メインは、上記論考の5章に基づいて、3つの限界を組み込んだ形で述べます。フレームワークは以下に再掲します。

 

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http://futureconsiderations.com/2015/01/reinventing-organisations/

 

この図の切り分けは、先の5つの仮説から外部的な条件と人々のマインドの在り方によって、ある程度導出可能です。

 その前に、人がマズローの5段階欲求に大まかには従っていると仮定します。

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http://www.motivation-up.com/motivation/maslow.html

 

 結論としては、自己実現がたの深緑色組織が最も効率が良いのですが、その理由として、以下が該当します。

1、個人が帰属意識を持つため、可能な範囲で全体を見ようとする

2、帰属意識は信頼性につながり、信頼し合っていれば、個人が素直に情報開示するため、必要な情報が吸い上げられやすい

3、ネットワークがあると、その情報が伝播しやすい

4、個人が役割を自覚して動くため、分業の指令を不要とする(逆に個人のスキルセットに依存する)

5、ユニットが小さいため、バリュープロセスの切り替えを行いやすい

6、承認プロセスが減るため、承認者を待つ必要が減る

7、信頼ゆえに、既存の評価がない場合も、主張する個人に時間が与えられる

8、個々人のリテラシーが上がりやすくなるため、良い意思決定を行いやすくなる

それでは、一つずつトレードオフを見ていきます。

 規模の要求と評価の多様性については、すでに論考の中に記載しています。(P28の「以上〜の段落中」)これは、つまり、集約による規模性は評価の多様性を阻害する傾向にあるということです。(権限と予算が委譲されていれば別ですが、それはほとんど別会社と言っても良いものになります。)集約性が評価の多様性を阻害する要因は、動員リスクとそれに伴う動員される側の自主性の阻害と視野の制約によるものです。

 集約性が高まると、一動作の損失が大きくなるため、間違えない意思決定が重要となります。そのため、間違えない意思決定をするために、意思決定を最もよくできる見込みのありそうな人に委ねるようになります。これによって、評価がその人の視野に制限されるとともに、その役割分担から意思決定しない側の人間もその評価軸に沿うようになっていき、評価の多様性が下がります。

 次は、規模とネットワークです。規模とネットワークは相互に強め合うポジティブフィードバック関係を持っています。規模が大きくなると、意思決定者が特定されてくるという問題は全段落の通りです。そのため、情報が一部の人に集中するようになります。それは、その一部の人が提案を受けるため、そこに情報が流れるからです。また、それによって知り合うという関係故に、そのあともお互いにアクセスが可能な状態になります。(逆にこれがあるしゅの複雑さを回避することにもつながっています)情報が集まることで、「より正しい判断」を行えるようになる可能性が高くなっていきます。それ故に、意思決定者と動員される人々の乖離はより広がっていきます。(しかし、この役割分担は、必ずしも間違ってはいません。多くの人が長期的に必要になることを評価できるとは限らないからです。) 一方、個々人がネットワークを広く持ちうる場合には、情報格差が生じにくいため、このような差異も生まれにくく、議論をして意思決定をするというパートナー的関係をお互いが築きやすいです。(そのため、意思決定者と動員される人という対立も減ります)すると、個々人のやる気も出ます。

 最後に評価とネットワークです。これは極めて直接的です。誰につながっているかは、誰に評価されているかと同義だからです。その中で、誰の評価をどの程度気にするかということが、個人の動き方を規定します。(研究者も研究コミュニティーの評価をそれなりに気にしますし)評価の影響力は、評価者の社会的信用力(金銭や地位)に依存します。組織内では、上長やその上の影響力が強いでしょう。これへのカウンターが360度評価です。しかし、すべての人にとって良い行動が必ずしも良いとも限らないのが世の常です。ただ、往々にして近くの人は文脈を一部共有していることが多く、ビジネスにおいては、そればバリュープロセスの一端を占めているので、合理的でもあります。5区分のモデルでは、信頼度が高いほど、上長の評価の影響力が小さくなります。

 以上をまとめると、

1、外的要因としての、資源制約性・社会リスク

2、それらの元で、規模(働きかけと合理性の限界要因)、評価(視野の限界要因)、ネットワーク(働きかけと視野の限界要因)の相互依存関係

3、内的要因としての相互の信頼関係

4、その表れとしての、組織の5段階説

と言うことです。

 次の記事で詳細を述べますが、オレンジ型までの社会の問題は、結局は動員される人のリテラシーが上がらないということに尽きます。これは、社会において、生産力が高度に上がったため、労働者の必要数と価値が下がってしまい、金銭レベルでの余裕が減ってきて、多くの人が期待を持てなくなった結果、尊厳を傷つけられ、怨念が募り、視野狭窄に陥ることで、政府側(共同体側)も投票制故に、意思決定の幅が狭くなってしまったということにあります。これは、グローバル化及び新自由主義思想が根本にあることが原因ではありますが、これに加えてインターネットが情報構造を変えて、「メディアの範囲が国家の範囲」であったことを変えてしまっていることも要因ではあります。(単純に言えば、再配分が機能していないということです。)(実際問題として、再配分問題がない場合、必ずしも深緑型社会が良いとは言えないです)